カテゴリー「小説:社会保険労務士」の記事

2010年10月20日 (水)

第17回 帰郷

※この小説はフィクションです。

 

暮れもさし迫り、唐突ではあるが、帰郷することにした。

毎年、毎年、帰って来いとは良く言われるが、去年は無職の身で帰る訳にはいかなかった。私の実家は関西であり、新幹線を使うと往復3万円ほど旅費がかかってしまう。月収20万円の身としては、今年も帰れないかな・・・とは思っていた。

また、その有馬記念では3,000円ほどをスッてしまった。給料少ないのにギャンブルなんてもってのほかである。ところが、年末に仕事納めの後、毎月月初めが給料の支払日だったのに、先生夫婦が気を利かせてくれたのか、通帳に12月のお給料が振り込まれていて懐の温かかった私は、ふらふらと、某地方競馬場の場外馬券売り場へと赴いていた。

そう、競馬好きの年末〆の最後の最後のレース、地方競馬の有馬記念、東京大賞典が行われるのだ。

 

地方の重賞レースとはいえ、JRA所属の馬も出てくる。というか、地方の重賞で人気になって結局勝ち負けになるのは、決まってJRA所属の馬だ。地方にとっても、JRA所属の馬を出さないと人も金も集まらないという事情がある。この年人気を分け合ったのは、2番人気サクセスブロッケンと1人気ヴァーミリアン

ああ・・・懐かしいね・・・ このブログが純粋に競馬のブログだった頃、両方よくこのブログをにぎわした馬だ。特に私はヴァーミリアンという馬が大好きだ。今でもG1レースで勝ち負けを演じるこの馬は、なんと“英雄”ディープインパクトと同じ世代なのだ。

ヴァーミリアンは、地方交流含め、ダートでG1戦を9勝挙げ、これは歴代最多G1勝利だ。思えば、芝の最強馬ディープインパクトの強烈な光の影で、ダートの最強馬ヴァーミリアンが日陰の人生ならぬ、馬生を歩む・・・まあ、地方ファンはダートを陰だなんて思っちゃいないんですけどね・・・

とにかく、この2頭で勝ち負けと思った私は、この2頭軸のフォーメーションから3連単を流すことにし、3着の相手も当然JRA所属馬からと、7人気の馬を拾って、3連単の万馬券を500円ほど獲ることに成功し、思いがけず5万円ほどの悪銭を得、ほとんど帰る気も無かったのだが、これは天からの授かり物と思い、帰省するることにした。

 

とはいえ、旅費で3万円強使って新幹線で帰るのもバカらしいと思った私は、青春18切符を買って鈍行列車で帰ることにした・・・ 1万数千円で済む。約半額の節約だ。

 

これが地獄の始まりだった・・・

 

とはいえ、私はこういう、のんびり、ゆっくりした旅が大好きなのだ。東京-大阪の距離というのを再認識する度でもある。かの坂本龍馬は10日間で往復したとかなんとか・・・東海道線を使った鈍行列車の旅を一度も経験したことが無いという人は、是非やってみて欲しい。100人が100人中、こう思うだろう・・・ そう・・・

 

し、静岡、なげーーーーーーーーーーよおーーーーーっっっっっ と

 

そう、この旅程の半分ほどが静岡なのだ。熱海から浜松まで・・・そこが延々と長い。2~3回乗り換える必要がある。6~7時間かかる。アホじゃねえか、静岡・・・ 行きはまあ、席に座れたから良かったが、帰りは立ちっぱなしだった。この区間だけでも新幹線を使えれば、どんなに幸せな旅だったろうか・・・

 

寒い、小雪の舞い散るホームで寒い寒いと言いつつ・・・次の列車を待った思い出・・・

 

名古屋から滋賀-京都-大阪っていうのは、県も変わるし、割とあっという間なんだけど、とにかく、静岡が長かった・・・というのが、この旅の思い出である。つうか、暇ならあなたも一度体験してみて欲しい。いや、日本中の青少年は一度体験してみるべきだ。静岡がいかに長いクニなのかを・・・

とはいえ、熱海だとか、豊橋だとか、米原だとか、ぶらり途中下車して飯屋やゲーセン寄ったりしてる自分も悪いんだが・・・どこの自転車少年だよ・・・と、昭和50年代以降生まれの人間には全く分からないギャグを挟みつつ・・・(これは以前書いたネタだった)

 

まあ、ちょっと冒険心に溢れた学生とかなら、やってみてもいいかもね。青春18切符の旅は・・・ アバンチュールな出会いとか、あるかもよ・・・ 私個人に関しては、隣の体育会系の青年が熟睡して頭こっちに向けてくるのが鬱陶しかっただけの旅だが。あと普通の横並びの通勤っぽい電車なのに、便所がついてたりして感激。

 

そうして、ようやく10時間の旅を終え、実家に辿り着いた頃にはすっかり夜も更けて年の瀬だった。家族に感激され、お鍋を食べて、紅白を見て、どこの家庭でも繰り広げられているような年末を過ごした。

そして、保育園児の甥っ子(妹の息子)に、お年玉として、1万円を握らせつつ・・・

「いいのに、いいのに・・・」と何度も固辞する妹に、
「いいから。いいから・・・」と何度も固辞を固辞する私。

 

翌日、まったりチゲ鍋を食しつつ過ごしていると、親戚の父方の兄の息子が遊びにやってきた。小さい頃よく、仮面ライダーごっこで遊んでやった彼も、すでにもう、ジャニーズに誘われたというような逸話を持つ面影はなく、すっかりいい好青年だった。彼はなんか、青年実業家で、いま社長らしい。年賀状を書くため、家の近所の会社へ正月早々出社したところを私の親父に捕まったという訳だ。

なんだこのグリコのサザエさんCMみたいな展開は・・・w

 

「いやぁ、久しぶりッスねー 兄さんちょっと肥えました?」

ハハハ。10年以上会っててない計算だ。社労士の試験に受かったことを教えてやると、

「凄いッスねー 引く手あまたじゃないッスかー 昔っから頭良かったッスもんねー」
「いやー そうでもないよ・・・ 今事務所で先生の元、修行中さ!」

 

ひとしきり、昔話に花が咲く。

 

「また、いつか、会いましょう!」

と、彼はさっと手を差し出してきた。私は、その手を両手で掴み、別れを惜しむ・・・

「おじさん、おばさんによろしく。」

 

なんか逆じゃね? 軽く敗北感で一杯だ。

 

正月は、妹のマンションに泊めて貰い、甥っ子に一晩中、動物の絵を描くことをせがまれた。まあ、まだ人見知りもしない、分別もない可愛い盛り。誰彼なし、懐いてくる。子供はいいね。純粋で・・・ 小金ができたら、またオモチャでも贈ってやろう・・・

そして、正月二日目、早朝、私は故郷を後にし、静岡の長さを体感する旅へと揺られることとなった。今回のちい散歩は、岡崎、豊橋、静岡、熱海。列車に飽きて下車し、ぶらーっとその辺、見て回った。名古屋名物は予算の都合上、天むす・・・のお弁当・・・ それくらいしか楽しみのない旅だ。アパートにたどり着いたのは真夜中だった・・・

 

ああ来年はひかりで・・・ せめて、こだまで帰りたい・・・

この長く曲がりくねったワインディングロードの旅も終わりに近づく・・・

 

年が明けて、うちの事務所、

 

最大最凶の事件

 

が勃発する。

この長く曲がりくねったワインディングロードもいよいよ終わりに近づく・・・

 

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2010年10月 8日 (金)

第16回 助成金ラッシュ

※このブログはフィクションです。

 

秋も深まり冬に入りかけた頃、当事務所では助成金ラッシュに沸いていた。

と、言っても、昨今の景気を繁栄した雇用調整助成金とかではなく、『定年引き上げ等奨励金』だ。何で今頃・・・な話題だが、奥さん先生がセミナーかなんかで小耳に挟んできたらしい。

 

とにかく、顧問先あっちこっちに営業を掛けまくった。

 

顧問先の多くは、定年が60歳で、60になったら65まで1年契約で再雇用契約を結びなおします・・・みたいな就業規則を作り、はや10年前に結構な額の助成金をせしめていた。

今回は、その定年を65に延長し、70歳まで再雇用契約を結びなおします・・・みたいな就業規則に作り替えると、50~100万近くの助成金が貰える・・・みたいな仕組みだ。

 

70歳まで雇い続けなければならないのか・・・・? で、多くの顧問先が二の足を踏んだ。しかし、「いや~そんな必要はありませんて。従業員は年金が貰えるようになったら、自然に辞めていきますて。」と方便で説得してまわった。

 

最悪、アンタはもう体がロクに動かないだろう・・・今まで通り仕事できないだろう・・・でクビにすればいいじゃないですか・・・

そんなこんなで、10社くらいが飛びついてきた。

 

とはいえ、ウチは奨励金から1割しか抜かないから、まだ良心的なのかもしれない。

 

どの顧問先も、ほとんど10年近く就業規則を作り直していない。10年の間に、さまざま、労働基準法をはじめ、育休・介護休業法等、各種法律が改正されていた。

ヤリ手の社労士なら、法改正がある度ごとに、就業規則を改正させ、その度に料金を請求しまくるから、10年間ほったらかしにして平気なウチは良心的だ!と散々言い聞かされまくった。ほったらかしにしてるあんたらもあんたらだろうに・・・

 

私の仕事は、現法律に合わせて、就業規則を作り直すことだ。私も青いので、超最先端の法律に合わせた就業規則に仕上がった。当時、来年度に試行される予定であった、育児・介護休業法の基準に合わせた、

たとえば、父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2か月(現行1歳)までの間に、1年間育児休業を取得可能とする(パパ・ママ育休プラス)とかも盛り込んでやった。

 

とはいえ、たとえどんなに作り直したとしても、所長がチェックすることはないのだ。あの老人がブ厚い就業規則をまともに読めたりすることはない。また、顧問先は顧問先で、まともに育児休業なんか与えたりはしない。与えるくらいならクビにするだろう。

とはいえ、当事務所の就業規則にはもともと『セクハラの禁止』という項目があったのだが、『パワハラの禁止』も盛り込んでいいですか? と所長に尋ねたことが、よく分からないが、あの老人の琴線を痛く刺激してしまったらしく、ほんと、丸一日説教を食らうハメになってしまった。

曰く、『パワハラなんて、この世の中にはあり得ない!』というのが、老人の主張だ。そんなことはないだろう。パワハラがある企業なんて、今どき珍しくもないだろう。だいたい、それを禁じたところで、別に、何が、どうということでもないだろう。しかし、老人は丸一日私を叱り続けた。「分かりました。パワハラは入れません。」では許してくれないのだ。意味が分からないが、それがこの事務所のしきたりだ(ゴメン。前に書いた記事でした)。

 

無駄な議論を丸一日行って、そうやって、一社分、ハイカラな就業規則が完成したら、

 

「ハイ、10萬円戴きます!」

の世界。

 

あとは、その就業規則をコピペして、社名だけ入れ替えて、他社も作り直す。

就業規則なんて、一社作れば、あとは楽・・・

 

奥さん先生の仕事は、その就業規則を、労働基準監督署に提出用、企業保管用、当事務所保管用、助成金申請用と、4部にコピーする作業だ。それくらいしか使えるところがない人なのだ。

ところが、当事務所のコピー機は家庭用の旧式なので、原本を一部、一部、セットしていかなければならない。50ページくらいある就業規則を、コピーするのに、物凄く時間がかかる。コピーするのに、2時間、3時間と時間がかかる。次第にプリプリ、プリプリ、し出してきた。

 

そんなにめんどくさいと思うのなら、歩いて1分ほどの距離にあるローソンに持ち込んでコピーすればいいだけだ。ただし、2,3千円はかかるだろうけど・・・それが勿体ないから、自分で、旧式のコピー機でコピーをとっているのだ。

 

しまいに、「(天下の)社労士を2,3時間拘束して、この金額(10万円)ではやってられないわ!」と言い出してしまった。

 

私に定年引き上げ等奨励金の申請書を書かせてるくせに、私が、『カ)○×△商事』とするところを『(カブ)○×△商事』とほんの些細なミスをしたら、プリプリ、プリプリ、「なんで見本を見ないのか!」と怒り出す。ほんと、実際、そんなのどうでもいいんじゃないのか? 

私が「ダメか、そのままでいいか、電話で問い合わせてみましょうか?」と聞いても、「私が直接行って聞いてくるから、余計なことはするな!」と怒り出す。

 

ほんと閉口してしまう・・・

 

それ以上に、この助成金申請の仕事では、いろいろあった。こんな匿名の、わざわざ「小説」と断りを入れたブログとしても、書いていいのか、ヤバいのか、判断に迷うようなえげつないこともいろいろあった。

時期が来れば書きたいとも思うが、まあ、無理だろうね・・・ 今は、一応、胸にしまっておく。

 

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2010年10月 5日 (火)

第15回 医者は金持ちのくせに、金に汚い

※この物語はフィクションです。

 

ある日、某泌尿器科の病院の院長から電話が掛かってきた。仕事を依頼したいとのこと。事務所のHPを見て電話をしてきたとのこと。

珍しい・・・新規の顧客か・・・ ちなみに、新規の顧客からTELが掛かってきて、仕事を依頼したいたいと言ってきたのは、年間4件くらいいしかない。

1件は目出度く顧客契約成立、2件目は「中国人の留学生を雇いたいのだがどうすれば・・・」というTELで、「そういった仕事は別に専門家がいます。行政書士といいます。行政書士に頼んでください」・・・と、やったとこもない仕事だったんので先生に無断で断った

3件目はカタコトの日本語で、労働問題がどうのこうの、言ってきたので、「そういった件は、労働基準監督署へ言って下さい」と先生に無断で断った。そもそも何語なのかも理解できなかった。お金にはなるまい・・・

ちなみに、この事務所のHPも一から私が作った。前職がDTPオペレータということもあり、お茶の子歳々だ。正直、ホームページビルダーでシコシコ作ったショッパいHPだが、こんなものでも参考にしてTELかけてくれる人がいるのだろう。

 

午後6時過ぎ、事務所の業務が終わって、所長とともにその医院がある隣の市までと車で出かけていった。この時間は相手方の指定なのだが、もちろん、私に対して超過勤務手当とか時間外手当なんか支払われることはない

 

そこは最近建設された某ショッピングモールに併設された診療所だった。最近、この郊外ではこういうショッピングモールが竹の子のように設立されている。

 

ちょうど診療時間が終わった頃だった。院長とその奥さんの医者、私、所長という四者でテーブルを挟んでの会談となった。院長先生は、私と同年代だった。が、背の低い私よりさらに背が低い。クセッ毛でメガネをかけ、小太り・・・ 私の自慢は勉強できました・・・ みたいなタイプ。奥さんは美人なんだろうけど、そのアゴのほくろが邪魔ですね・・・みたいなタイプ。

 

4人掛けのテーブルに所長と私と向かい合って、とりあえず話を伺うことになった。「50万円くらいかけて求人広告を出して看護師を雇ったのだが、働いて数ヶ月ほどで給料の値上げ交渉をされて、拒否したら辞めて余所に移ってしまった。」とのこと・・・「50万円を損害賠償したいのだが・・・」という依頼だった。

どう考えても無理だろう・・・と直感で思った。顧問契約の依頼かと思ってた私たちは相当面食らった。

「そんなに求人広告にお金ってかかるもんなんですか?」
「看護師は人で不足で、いろいろ広告を打たないと人が集まらないんですよ」
「ハローワークや無料の求人システムをご利用すれば・・・」
「そんなの、ろくな人が集まりませんよ・・・」

以前、ハロワで募集掛けて、ろくな人材しか集まらず、しかも大量に集まって閉口したらしい。優秀な人材を集めるには、有料の求人情報誌にそれなりのお金を出して、それなりの広告を打たないといけないらしい。看護師は給料もそれなりの金額を払わないと集まらず、引き抜きも激しいらしい。

「裁判をせずに50万円を請求する方法はないのですか・・・」

 

問題はお金ではなく、従業員になめられた態度を取られたのが相当頭に来ているらしい。しかし、そんなことが本当に可能なのだろうか・・・ 一般の雇用関係において、労基法16条では、労働契約の不履行について違約金を定め、損害賠償額を予定する契約を結ぶことを禁止しているのは、社労士受験生にとってはよく知る話だけど、ちょっとと深く掘り下げてみると、

民法415条には、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行することができなくなったときも、同様とする。』とある。また、民法709条故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う』とされている。

しかしながら就業規則に定める「重大な過失」が労働者の側になければ損害を認めないという判例がある。

また、使用者側の配慮その他諸般の事情に照らし、損害の公平分担という見地が使用者側にも求められる。また、労働者側の経済的負担や労働環境を考慮され、または、損害軽減措置(保険の加入)等も使用者側に求められる。

結局は裁判になって、原告の言い分が最大限認められたとしても、も4分の1相当の賠償しか認められないのがこれまでの例である。

要するに、使用者が労働者に、仕事中に労働者の起こした損害に対する損害賠償を求めようとするなら、それは裁判を起こす他はない。労働者の不注意な行為が損害に繋がったことを使用者側は公の場で証明しなければならない。これを自力救済の禁止という。

仮に正当な権利があると考える場合でも、個人が腕力や社会的な実力によってその権利を実現することは禁じられているのだ。これを無条件に認めてしまうと、立場の強い使用者が労働者に損害を請求できるということがまかり通ってしまう。

 

これはもちろん、仕事中に労働者の起こした損害に対する例であり、募集広告にかかった費用を賠償するのは全く別の話で、相当無理がある。

 

「元従業員に損害を請求するのはかまわないが、支払を拒否されたら、それ以上手は打てない。裁判にかけるしかありませんが、まず間違いなく勝ち目はありません。」とめずらしく所長はまともな説明した。私にも異論は無かった。

「そもそも、期間の定めのない契約では従業員はいつでの解約の申し入れが出来る労働(雇用)契約の場合解約の効果は原則として申し入れの後2週間を経過することによって生じる。」

ということを説明していた。「それは労働基準法で決まっている。」と。

「え? 労働基準法にそんなことあったっかなあ?」
「あります。」
「労働基準法ですか?」
「労働基準法です。」

先生は自信たっぷりにそう断言してしまったので、私は

 

「センセ、それは民法です。」

 

とは言えなかった・・・ 労基法では従業員側からの退職については何も定められていない。

 

頭の良い院長夫婦は、自分自身で労基法や労働契約について相当勉強してたらしく、たぶんそれがトリガーとなって、この話はそれ以上、お流れとなってしまった。

先生夫婦は、ブツブツ、ブツブツ、だから医者は・・・ あいつら、金持ちのくせに・・・ とにかく金に汚い・・・ と文句を言う。

当事務所には数件医院の顧問先があった。

「2週間も夏休みをとって、アメリカのコンドミニアムでゴルフ三昧なのよ。何様のつもりなのかしら」と女先生は言う・・・が、

「年2回、100万円くらい使って、家族でヨーロッパ旅行をし、お土産にペルシャ絨毯を買ってくるあなた達とどう違うのんだよ・・・」 

 

その言葉はグッと飲み込んだ・・・

 

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2010年9月30日 (木)

第14回 この守銭奴!

※この小説はフィクションです

私と同年代の事業主が2人いた。

 

今にして思えば、彼らともっと心を通じ合わせれば良かったと思う。

 

同年代にして、一国一城の主となった彼らからは、得るものも大きかったし、尊敬しうる存在だった

 

一人目は、以前にも語ったが、自動車やバイクの修理工場の社長。先代の時代に雇用され、先代は引退に際し、跡継ぎもいなかったことから、そのまま社長になった人だ。

しかし、腕は確かで、自分の腕を頼りに依頼してくれる人がいるとのことだ。

その社長が悩んでいたのは、いい従業員が根付かないということだ。私ら世代の従業員を雇ったが、非正規雇用が長かったその青年からは、仕事に対する気概が全く感じられない・・・ どうして、同世代にこんな若者がいるのか・・・ と嘆いていた人だ。

 

最初に雇った20代の子の方が、素直で吸収力も早く、頼りになる・・・と・・・ ところが、その20代の子も来月、辞めるとのことだ・・・ 社長自身はアツい方で、私は好きだったが、やっぱり経営者と雇用者となると、難しい問題もあるのだろう・・・

 

もう一人は、建築関係の調査業務という珍しい仕事をされている方だ。私がこの事務所に入ってから、顧問契約をされた新規の方だ。

とはいえ、結局、我が所長自身、新しく若いその社長と上手くコミケーションがとれず、扱い方に困っていたので、折衝は主に私に一任されることが多かった。「将来は君に任せてももいいから・・・」というのが我が所長のキメセリフだった。

事業所も近所にあったので、誰それが辞めた・・・、誰それを雇った・・・ と、ことあるごとに、よく事務所へお邪魔させてもらった。その度に、私は自転車を走らせ、その事業主の元へ通った。

ふと道端で会ったりもした。私も自分と年代が近いのもあって、親近感も沸いた。お髭の逞しい事業主だった。そんな頃、事件は起こった・・・

 

その事務所が、将来を見据えて今の事務所が手狭になってきたので、より大きい、より駅に近い場所へ引っ越すというのだ。

それ自体は「おめでとうございます」という話なのだが、所長がとんでもないことを言い出した。

 

「健保と雇用保険の所在地変更の手続は、別料金だから

 

請求してきて

 

と・・・

 

私は、最初はスポット契約だったこの事務所を、訪問する度に諭して、顧問契約にし、来年度は事務組合へと加入してもらえることを確約してきた。地道に、地道に、地道に・・・

そうやって信頼関係を築いてきたのに、私にとっても寝耳に水な話だ。だって、それは顧問契約の一部なんじゃないですか? と。契約書にもうたってあります・・・と。

 

所長は、何が気にいらないのか、それは顧問契約には含まれない!と。この事務所では昔からそうしていると・・・の一点張りで譲らない。

 

「そんなことをすれば、契約を打ち切られますよ。」
「それなら、それでかまわない。気持ちよくこちらが請求する額を払ってくれないなら、
そんな事業主とはこちらから願い下げだ。」と。

もう、自分自身、どうしていいのか分からなかった・・・ それならそれで、お前が、そう言いに行けよ・・・ と。

 

結局、私が自分で言いに行くことになった。所長の言い分には納得できないが、私もそう命令された以上、従わない訳にはいかない・・・ この経験が、いずれ自分のプラスとなると、自分にいい聞かせた。

当然、

 

その社長は激怒した。

 

当然だろう。その気持ちはよく分かる。顧問契約をしているのに、住所変更をしたからといって、ただそれだけで、それは当然契約書に含まれている内容なのに、4~5万円だかの料金を請求しますと、私は言っているのだ。

これまで信頼関係を築きつつあった私の前で、そのことを告げた私の前で、私に向かって激怒したのだから・・・ そして放り投げるように、変更手続の料金の万札を私の前に投げ出した。それをそそくさと、自分の財布にしまう私・・・

社長が言いたかったのは、

 

「この守銭奴!」

 

だったことは疑いようがない。逆の立場なら、私はそう言った・・・ それを肌で感じつつ、私は忸怩たる思いで私はそれを受け取り領収書を書いた。

私はどうにもこうにも、やりきれない気持ちで、情けない気持ちで、逃げ帰るように事務所へと帰った・・・

待ちかまえていた所長へそのお金を渡す・・・

 

その瞬間、あの老人のニヤっとした顔は一生忘れないだろう。

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2010年9月23日 (木)

第13回 何を貫いて、何を得るというのか・・・

※この小説は完全なるフィクションです。

 

秋も深まったある日、思いがけない事件が発生した。

ある工場系のクライアント先に対して、事務組合系の監査が入るというのだ。

「ああ。よかったわ。あそこは特に問題のあるようなところはないから・・・」

奥さん先生はそう言った。

ところが、どっこい、そんなことは全く無かった

 

私はこの年の4月に入所した。入ったばかりの頃、右も左も分からず、先生から手渡された手書きの給与台帳をExcelに入力するのが主な仕事だった。それを元にして労働保険料を算出し、そのままそれを使って年度更新作業を行った。

改めて、そのクライアント先から賃金台帳を預かって、その年度更新の数値と見比べてみると、恐ろしいことが判明した。先生の年度更新の数値には全く「通勤手当」分が含まれていないのだ。

「通勤手当」は税法上、非課税である。だから、その会社の賃金台帳は所得税を計算しやすいように別に分けて書かれていた。ところが、労働保険料は「通勤手当」を含めなければいけない。それを含めて、一切合切の賃金の総支給額に労働保険料率と雇用保険料率を掛けなければならない。さらに、パート、アルバイトの賃金分がその年度更新の賃金総額から全く抜け落ちていた。

要するに、先生は、クライアント先へ赴き、賃金台帳を見せてもらい、それを給与台帳へと先生が転記したのだが、その作業がいい加減だったため、恐ろしく齟齬が生まれてしまっている・・・ このボケ老人、ボケてんじゃねえぞ・・・

 

これをそのまま提出したのでは、監査で100%問題を指摘され、労働保険料を追徴されることになるだろう・・・ 保険料の過少申告となっているのだ。当然である。

 

私はあくまで言った。主張した。「正しく算出し直して、改めて保険料の算出をし直しましょう。」

 
奥さん先生は激怒した。

 

「それはウチの事務所のコケンに関わるでしょ!」

 

と・・・

 

私は言った。「社労士は法律家です。普通の人以上に法律は遵守しなければなりません。ましてや、クライアントの利益となるためではなく、自らの利益のためなど言語同断です。」と・・・

 
「君はそれでもいいかもしれない。この事務所はどうなりますか?」

 

この件についても、3時間ぐらい議論した。そして先生夫婦と私との溝の深さは決定的となった。

  

結局は、最初に提出してる年度更新の数値に合わせるように、賃金台帳の方を改竄することとなった。結局私が折れた。もうバカバカしくなってきた。私がいくら正論をいったところで覆るはずもないのだ。このまま議論を続けていても、無用に時間を浪費するだけで、結局私が自宅へ帰れなくなってしまうだけだ。私はいくら残業をしたとしても、1円も残業手当を支払って貰えない身なのだ。

 

私は何を貫いて、何を得るというのか・・・

 

賃金台帳を改竄するにあたっても、誰の記録をどう変えればいいのか、全部私が計算した。3人分を1年半に渡って改竄すれば、とりあえずの辻褄が合うといいう計算をExcelで算出した。

そういった複雑なことに対しても、結局、私がやらなければどうにもならないのだ。老人には少々複雑すぎで無理な計算だ。

 

先生がどこかの文房具店で全く同じ賃金台帳を仕入れて来、私が全部手書きで、3人分の賃金台帳を書き直した。気の抜けない作業で、ペンで書いていくため、ちょっと書き損じてはやり直しの非常に辛い作業となった。生意気にも、先生は、「元あった賃金台帳と筆跡が似てない」という理由で書き直しを命じたりもした。

 

「この事務所に来て、今日が一番仕事をしましたよ・・・」

 

私は皮肉混じりにそう言ってやった。以後、ほぼ、ひと月に渡って、「あなたが賃金台帳を改変したことが、この事務所の一番大きな仕事なんてね・・・ ウフフフ」と嫌味を言い返され続けることとなった。

 

恐ろしいことに、決して「あなたに賃金台帳を改変させた」とは言わなかった

。要するに、暗に、「私たちの存ぜぬところで、あなたが自主的に賃金台帳を偽造した」と言いたいのだろう・・・ さすがは、わが尊敬する先生夫婦だ。抜かりがないぜ。いざとなったら、私を切っておしまいなんだろう。

 

この日ほど私は社労士登録を済ませてなかったことを良かったと思わない日はなかった・・・ もしこの件が発覚したとしても、社労士でない私が処分される道理があるまい・・・ あんたたちの責任だろう。

 

結局、監査は問題なくパスした。

 

私の完璧な仕事にそんな問題が起こり得るはずもなかった・・・

私の仕事にも抜かりはない。

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2010年9月 9日 (木)

第12回 建築関係の事業主は面倒を嫌う

※この小説はフィクションです。

 

クライアントの何割かは、建設業界だ。

建設業界の事業主は、荒っぽい人が多い。荒っぽいというより、適当というか、どんぶり勘定っていうか・・・ とにかく、細かいことを気にしない。気にしたくない

 

一番可哀相だったのは、妊娠した・・・というだけであっという間に解雇にまで追い込まれた女性の件だ。

 

発端はこうだった。

 
「女性事務員が一人辞めます。手続お願いします。」
「離職の理由はなんでしょうか?」
「自己都合です。」

 

いざ、離職票を作成し、彼女の元へ届いた時に、その当の本人である彼女から、直接、事務所へ電話がかかってきた。

 

「話が違う!」

 

と・・・

 

余談だが、私はハローワークから戻ってきた離職票を離職者に送る際は、かならず「離職された方へ」という小冊子の手引きを同梱していた。そんなものでも、あると、ないとでは、離職者が知ることの出来る情報、しいては、これから受ける利益に格段の違いが生まれるからだ。

ところが、私が雇用される以前は、そんなものを同梱してはいなかった。わずかに、その小冊子の表紙をコピーして添付していた。なぜなら、そんなものを同梱しては、郵便料金が余計にかかるからだ。この圧倒的セコさ!

私はこればかりは・・・と説得し、ヤマトのメール便を利用すれば、小冊子を同梱しても80円で済みますから・・・ と、同梱することを懇願し認めてもらった。近くにヤマトのメール便を扱っているコンビニが無かったから、毎日就業後に、コンビニまで遠回りしてから帰宅した。

 

それでも、新しく被保険者になった方に対して「被保険者となられた方へ」のパンフレットを添付することは、結局認めては貰えなかった。労働者に余計な知恵をつけるのは、事業主のためにはならない・・・という実に洗練された理由からだった・・・

女性は言った。

 

「私は解雇されたのだ。だから会社を辞めることに同意したのだ。」

??? 

よくよく話を聞いてみると、その女性は自己都合は、失業給付を受けるのに給付制限がかかること給付日数が短縮されることを知っていた。「解雇する」という理由で失業給付が受けられるから、会社を辞めることに同意した・・・と言っているのだ。

 

その事業主にTELする。アッサリ
「ああ。解雇にしてください。」と。

 

「は、話が違う・・・」とは私の台詞だ。すぐさま、離職票を回収して、書き直すハメになった・・・

 

しかし、ちょっと待てよ・・・ 労働基準法19条「産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない・・・」と謳ってる・・・、

あああ、か、解雇できないじゃん!

 

解雇予告日を変えるしかない・・・

 

もう、離職票は書き直し、書き直し、でグッチャグッチャになってしまった。いったん、ハローワークのスタンプが押されている以上、簡単に破棄して新しい用紙に書き直す・・・というようなこともできないのだ。

 

それよりなにより、本当にこの女性を解雇させるのは正しかったことなのだろうか・・・ 妊娠、出産、育児休業期間中はそもそも、会社は賃金を支払う必要はない。女性はそれなりの育児休業基本給付金等を受けられる。もし、子供を託児所などに預けられることができれば、職場復帰給付金も受けられる(H22年4月で廃止)。

そして職場復帰を実現させたら、育児休業取得促進等助成金(100万円)が受け取れ、事業主にとっても悪くない話なんじゃ・・・

母は、子を持つ親は、子を産む女性は、国をあげて守っていこうというのが、この国の方針である。

 

建築関係の事業主は、面倒臭いことが嫌いなのだ。それはうちの先生についても言える。

 

また、建築関係の職場は遠く離れた中国、東南アジア、中東系の人々を多く受け入れている。私もたいがい低賃金だが、それに輪を掛けて安い給料で・・・

 

しかし、中には妻子を日本へ呼び寄せる甲斐性のある方もいらっしゃる。

 

「○○の奥さん、病院にかかりたいので、扶養手続をしてください。」
「え? いつから来日されていたんですか?」
「う~~~ん、1年半年くらい前かな?」

「では、加入日は何時にしますか?」

 

これは結構、大きな問題である。妻に対して扶養手続をするということは、国民年金の第3号被保険者にするということである。将来的には分からないが、その外国人の妻の方も、将来日本で年金を受けることがあるかもしれない・・・ そうなると、少しでも長く加入期間とするためには、加入日はできるだけ遡った方がいい。将来的には、この国の年金を受け取ることになるかもしれない人たちなのだから。3号の遡及適用は国民年金法的にも2年は、やむを得ない理由がある場合は、それ以上も、認められている。

国民年金が外国人も含めて全て加入させるという法律である以上、差別は許されない。

 

それよりなにより、なんで来日したときから、扶養に入れていないのか・・・

「もし遡って加入させるなら、その間の所得の証明や・・・」
「今日でいいです。」

 

その一言でこの問題は終了です。どんぶりが基本の業界だからだろうか・・・

 

あと、辞めて本国に帰国した方に対し、

「退職の手続をして下さい」
「え、あ、あの、○○さんの離職票は・・・」
「そんなもの必要ありませんよ。もう日本にいませんから・・・」
「あ、あと、厚生年金保険に加入されていましたよね。脱退一時金について御存知でしょうかね・・・」

もし、将来日本に来る気がないなら、将来日本で年金を受け取る気がないのなら、厚生年金脱退一時金を受け取れるチャンスがある。在日外国人にそんなものくれてやるな・・・という意見があるかもしれない。しかし、これは、その方が自分で支払った保険料の掛け捨てを防ぐ・・・という意味があるのだ。2~3年も日本で働き、その間2~30万円の給料を手にし、日本の法律に基づいて、ほとんど意味のない厚生年金保険を払い続けてきたのなら、2~30万円の脱退一時金を手にする権利があると私は思う。

その国の物価は知らないが、それだけのお金でも、本人にとっては嬉しい退職金となるだろう。

「ハッハッハ。センセ、○○は、もう日本にいませんから・・・」

 

ちなみに、厚生年金の脱退一時金は、日本語だけでなく、英語、中国語、ポルトガル語等、多様な原語で申請できる。その気になれば、本国から日本政府(年金機構)に対して請求が可能なのだ。本国で、そういう知恵を付けてくれる賢者がいてくれることを願うばかりである。

 

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2010年9月 6日 (月)

第11回 君は日本語が使えない!

※この小説はフィクションです。

 

よく

 

「君は日本語が使えない」

 

と叱られた。

 

無茶苦茶な理由でよく叱られるが、「申し訳ございません。すみません。」と謝る以外に手がない・・・

 

クライアントからの労務相談などで、事例を探すのにネットで検索したら、ネットは使うなと怒られる。漢字をド忘れして、ネットで調べたら怒られる・・・

本当、この手の傍若無人な怒られ方には、イライラした

 

曰く「ネットは嘘か本当か分からない。」と・・・

 

例えば、「使用期間中、従業員を即時解雇することができるのか?」というクライアントからの質問があった。

 

発端はそのクライアントが「実習型雇用」について知ったことから始まる。「新しく雇った○○君について、この実習型雇用が利用できないのか?と・・・

実習型雇用とは、要するに最初に6ヶ月間の有期雇用を結び、その間は10万円×6か月の給付。その後、正規雇用へ転換すると半年ごとにで50万円×2回、ハローワークから奨励金が受けられるという制度である。詳しくはリンク先から辿ってみてほしい。先生は答えた。

「もう今からじゃ、実習型雇用は適用できませんよ・・・
 ですが一つ方法があります。その人をクビにして、新しい人を雇えばいいんですよ・・・」

とんでもない話である。

 

私は、「使用期間中でも従業員を解雇法理に法らないで解雇することは無効だ」と主張したが、先生は有効だと言って譲らない。その根拠が「使用期間中の解雇しても解雇予告が不要だから」というものである。

で、同様の質問に対する、弁護士の回答をネットで引っ張っててプリントアウトしたら、「ネットは信用するな」と・・・ 「本に書かれたことのみ、信用せよ。」と・・・ 埒があかないので、


 

この本を安い給料の中から、中古で安く仕入れ、該当する箇所を示した。この本の中には昭和50年代の判例が示されていた・・・曰く「そんな何十年前の、古い判例は信用できない。」と・・・

 

要するに、自分が気に入らない情報は何が何でも信用したくないのだ。そして自分の気に入る情報は何が何でもOKとなる。

 

また、別のクライアントの就業規則を作っていたとき、こういうことがあった。
「最近の就業規則は、セクハラだけじゃなく、パワハラについても禁止の一文を入れる例がありますよ。」

「パワハラなんて現実に起こりうる訳がないじゃないか!」

意味不明の激怒!

これについても、3時間ぐらい議論を重ねて、結局就業規則に入れないことになった。自分が認めたくないことは、徹底して認めたくない

 

そのくせ、「就職内定者に出す内定の文章ってどうすればいいですか?」という質問に対し、先生はなんと「yahoo知恵袋」の回答をそのままプリントアウトし、そのままFAXしたりしていた。この通りにして下さいだと。

 

ハァァァァアァア? 

訳が分からん! 

 

だいたい、yahoo知恵袋は俺もいくつか(内緒で)回答乗せてんだぞ

 

せめて、自分の言葉に変えて伝える工夫でもしろよ・・・と心の中で思ったが、要するに、自分がそれで正しいと思う限りにおいて、ネットでも何でもそれは正しいことなのだろう・・・

 

頭湯だってくる・・・ 

 

よく、「君は電話ができないね。FAXの日本語がおかしいよ。日本語がしゃべれない。」と叱られた。

クライアント先へ送るFAXなどは、あたりまえのように、ビジネスレターとして、敬語を入れて作るのだが、社労士先生である自分から、クライアント先へ出すレターに敬語を使うのはおかしい・・・という理由で先生の添削が入る。

当然、そういう書類は、私はWordで作りたいのだが、手書きでないと修正ができない、上達しない・・・という理由で禁止となる。

先生の気に入るような文章を書こう、書こうと努力するが、支離滅裂なので、どうしてもこればかりはできなかった。

 

もう、「いつから保険料をいくら控除すればいいの?」とか「新入社員を雇ったのだが、必要な書類を教えてください」等の簡単な質問は、先生を介さず直接クライアントとやりとりをすることも多かったもちろん、全く問題は起こらなかった。

 

そりゃ、最初の頃はクライアントと電話で会話するのも、ぎこちない面はあったかもしれないが、すぐに慣れて1時間以上在職老齢年金の仕組みや金額を事細かく丁寧に説明し、ご理解いただくというようなこともあった。

先生がご自身で作られたFAXは、よく、「意味が分からない・・・」ってクライアントから電話かかってきたりもした。その度に私が先生に知られることなく、フォローの電話を入れた。

 
「ありがとうございました。ようやく意味が分かりました。」
「いえいえ、どういたしまして・・・」

 

要するに、ある程度、お年をめした方からすれば、自分が絶対的に正しいと肯定する以上、私や世の中は絶対的に間違っていると、思い込んでしまうものなのだろう。

 

そんなの、芸事の世界や、料理人の世界や、世の中やドラマなんかで、よくあるよね。

 

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2010年8月25日 (水)

第10回 恐るべき算定:後編

※このブログは相当フィクションです。

 

現実にはあり得ない話です。

ここから加速度的に展開する、リアルっぽいありえない描写は、将来の芥川賞候補の作者の筆力のなせるワザです・・・ ちなみに、このシリーズは20回まで続く予定です。

 

 

健康保険と厚生年金保険の保険料を算出する元となる、“定時決定”・・・この事務所では“算定”と呼ばれる作業の最中に判明した恐ろしい出来事とは・・・

この作業の概略を説明しよう。

 

まず、

①社会保険事務所(現在は年金事務所)は顧問先の企業に対して、被保険者のデータが入ったフロッピーを送りつけてくる・・・

②そして顧問先の事業主はそのフロッピーを当事務所へと送付する。

③当事務所はそのフロッピーを、社会保険庁(現在は年金機構)が提供するプログラムに掛けて、4,5,6月の賃金の総支給額を入力し、その被保険者の1年分の保険料の算定の基礎となる「報酬月額」を算定し、それをまた管轄先に社会保険事務所へと送り返す。

④社会保険事務所は、それを元に「標準報酬月額」を決定、顧問先企業へと通知し、一連の作業は終了する・・・

 

実に単純な作業である。複雑だなと思いねー。

やってみれば簡単なのだ。そんな一つや二つ、あなたも世の中でいくつも経験しているだろう。

 

社会保険事務所が提供するプログラムに、フロッピーを読み込ませた時、

 

アレ?

 

っと思わせることがあった・・・

 

もうずいぶん以前に退職して、現実にその事業所にはいないはずの人が、フロッピー上存在しているのだ・・・ まだ辞めていないことになっているのだ・・・

 

アレ?

 

「これはどういうことですか?」と私は聞いた。奥さん先生はシレっと答えた。

「ああ、たまに、そういうことがあるのよ・・・」

 

あ、ありえね~~~

 

ガクゥゥゥ ブルーーーーゥゥゥゥゥゥ、震えが来た。オカンがきた。悪寒が来た。

 

私は確かにこの業界ではまだ3ヶ月目の初心者だ。しかし、パソコンの知識はそれなりのものがあるという自負がある。パソコンの世界は1と0の世界だ。2進数の世界だ。

 

「たまに」というような曖昧なことが起こる訳がない・・・パソコン世界でありえることと、ありえないことの区別くらいはつく。

 

正直、自分自身パソコンを使えると思っている老人ほど始末に負えないものはない。

 

たまには、そんなこともあるわよ・・・ という解説に、「ああそうですか・・・」と答える訳もなく、間髪いれずに社会保険事務所へとTELを入れた・・・

 

余談だが、社会保険事務所(当時)へは電話が全く繋がらない。100回掛けて1回繋がればいい・・というような組織だ。あまりに繋がらないから、「適用課」ではなく「庶務課」とかの直通番号へ掛ける。「大至急、適用課へ回して下さい」・・・と。庶務課の人は「少々お待ち下さい」・・・と言ったっきり、5分くらい保留音が流れて、いきなり電話が切れる・・・というような組織であった。

それは年金事務所となった今も変わらない。そりゃ、庶民も年金行政に不信を持つよ・・・

 

「もしもし、私○○社労士事務所のシャチと申します」
「お世話になっております」
「お世話になっております。当方は社会保険労務士事務所なんですが、当方の顧問先の従業員の方なんですが、1年半前に退職しているはずなんですが、フロッピーには名前があるんです。どうなってるのか、ちょっと調べていただけませんか」
「少々お待ち下さい・・・ その事業所の記号番号をお願いします」
「○○の××です」
「その従業員の保険番号は分かりますか?」
「△△番です」
・・・
資格喪失届は出てませんが・・・
「え~~~~~そんなことありませんよ。1年半前に辞めてる人ですよ」

 

心臓が凍り付く・・・ 要するに、辞めたはずなのに、資格喪失届がまだ出されていないのだ。事業主から手紙なりTELがあって、「あの人はクビにしたから、手続宜しくお願いします」と言われたはずなのに、全く手続を行っておらず、ほったらかしになっているのだ。厳密に言えば、資格喪失届は出している、出したつもり、なのに、なぜか処理されていないのだ。中途入社の私にはその辺りの深い理由は分からない。

 

計算してみると、その期間1年と半年で、保険料は総額50万円近くをオーバーしている。払う必要のない保険料を払ってしまっているのだ。社会保険事務所から事業主へと請求される保険料は、従業員全員の総額なので、アバウトな事業主は気づかないでいてしまったのだ。

だけど、50万円強とういう金額は、リッチな事業主にとっては大きくなくとも、被保険者・・・従業員にとては大きくないですか?

 

私は、顧問先台帳の全ての従業員に対して、もう一度、本当に現在も在籍しているのか、確認してみることにした・・・ 

すると、恐ろしいことに、『資格喪失モレ』とでも表現すべき、会社を退職して在籍していないのに、手続上在籍したままとなっている元従業員が3人いた・・・ その後、辞めてるのに、雇用保険の喪失がかかってない従業員が2人いた。

 

計5人の喪失モレが判明した。ななな、なんだよ・・・これは・・・

 

その後、どう対処したかといえば、資格喪失届に始末書を1枚添付しておしまい。社会保険事務所は何も言わず、何も問題にすることもなく、それを受け取る・・・でおしまい。

 

社会問題化してもいいレベルの話じゃないのか、これは・・・ まあ、私の前任者が恐ろしく仕事が出来なかった・・・という話なのかもしれない・・・ しかし、見逃すなよ・・・社会保険事務所! 表に出れば、所詮叩かれるのは、お前らだろうが・・・ お前らもっと問題にしろよ、お前らが問題にされてる場合じゃないだろうが・・・

 

事業主は、本来払う必要のない保険料が帰って来るのだから、いい加減な仕事をしやがって・・・と怨みこそすれ、内心喜んだかもしれない・・・ ちなみに、さきほどの事業主は、結局50万円近く、還付されることになった。

 

だけど、そんな立場におかれた従業員はどうなるのか・・・

 

1年半近く、本来は国民年金保険料を納めなければならなかったのに、督促が来ることもなかったのだ。結局、収めなかったかもしれない・・・ しかし、1年半近く、まとめて20万円ほどの保険料を納付しなさい・・・と督促が来ることになったかもしれない・・・ 納期限はそれでも・・・あと半年なのかもしれない・・・ それを個人が背負わされることになる。

 

ちゃんと喪失届が出されていたなら、雇用保険の失業給付を受けることになったかもしれない・・・ 離職票が届かないばかりに、その機会を永遠に失ったのかもしれない。

 

確実に、従業員、元被験者の人生は狂わされることになったのではないのか

 

先生曰く、「そんなことを心配する必要はない。もしそうなら、自分で手続が正常に行われてないと、言ってきてるはずだから・・・ もし離職票が必要なら、手続が正常に行われてないと、自分から言ってきてるはずだから・・・」

 

ちゃんとした知識のある被保険者なり元従業員なら、確かにそうしたのかもしれない・・・ そうでない可能性もあるのではないか・・・ 離職票がこないから、ハローワークへ行けなかったのではないか。催告書がこないから、国民年金の加入の必要を認めなかったのではないのか。無知ゆえ、泣かされるハメに陥ったのではないのかぁぁぁぁ!

 

私は、事務所の杜撰な手続を是正した・・・

 

とは受け取ってもらえなかった。私は、一環して、基本、従業員の立場となって、従業員の利益のためには見過ごせないことは見過ごさないというスタンスをとってきた。

 

しかし所長夫婦には、そんなことは些末なことで、また、余計なことをした・・・ と解釈されてしまった。事業主にこの一件、どう説明すればいいのか・・・と。実際、所長も事業主へのこの件の説明が、嫌で、嫌で、かなり凹んでいた。いい気味だw

 

でも、ありえない。ありえなさすぎるよ・・・

 

もう、ここは、常識や理屈は通用しない世界なのか・・・

第1部:完

 

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2010年8月23日 (月)

第9回 恐るべき算定:前編

何はともあれ、社労士受験生の皆様、試験ご苦労さまでした。

チラっとオフィシャル覗いたら、今年の受験申込者は初の7万人超えだとかで、ますます、社労士に対する社会の認知度がUPし、資格に対する関心も高まっているようですね。
反面、社会に対する社労士への貢献や期待も高まっているのだと思います。

何はともあれ、とりあえず、今はゆっくりと疲れを癒してください・・・

 

社労士の資格を取ったがため、苦悩し、苦労し、しかし、食いっぱぐれることなく渋太く生きている先輩がここにいる・・・ 

私も来週あたり、試験に挑戦してみよう・・・と思います。

 

 

 

※この小説はフィクションです。

夏のある日、この事務所では“算定”と呼ばれていた、“定時決定”の作業に取りかかっていた。

要するに、顧問先の社員の4,5,6月の給料の総支給額を聞き出して、9月からの健康保険、厚生年金保険の保険料の額を決める、『報酬月額』を導き出し、それを社会保険事務所(当時)へ申請するという作業だ。

当事務所では、その一連の作業をWindowsのソフトで行い、フロッピーで提出することになっている。要するに、電子申請の一歩前の「磁気媒体申請」という奴だ(詳しくはリンク先から見ていって欲しい)。

 

この一連の作業でもすべて私一人にやらせられたくせに、ほんと、大いに泣かせられた。

 

例えば、もう何十人もある給料の金額をパソコンを入力していくのは、大変手間のかかる作業なので、いつしか、“縦”に入力するようになった。つまり、顧問先から渡された賃金台帳を、4月なら4月分を一気に“縦”に入力して全員分終わったら、次は5月分を一気に“縦”に入力、最後に6月分を一気に“縦”に入力する・・・という具合に。

私はもうパソコンの画面はほとんど見ずに、恐ろしいスピードで賃金台帳だけを見ながら、ブラインドタッチで一気に入力していくことができる。そしてその方が絶対的に入力ミスも少ない。

ところが、この手段に対して難癖を付けられる。曰く、

 

「そんな入力の仕方で、顧問先従業員の特徴を一人一人捉えることができるのか?」

 

曰く、一人、一人、4月、5月、6月と入力することによって、その人の特徴を掴むことができ、その従業員を覚える事が出来るのだ・・・と。あ、あの人給料上がったね!、あの人最近給料落ちっぱなしじゃん!・・・しいては、その会社の業績や景気を判断することもできるのだ・・・と。

理屈は分かる。確かにそれが理想なんだろう・・・ 所長夫婦は例年そうしてきたのだろう・・・ だけど今年に限っては、私一人にその入力作業をすべて押しつけて、全く手伝ってはくれる気はないのだ。7月10日という期限がそこにはある。時間なんていくらでもかかってもいいだろう、残業してやればいいだろう・・・ という。1円たりとも超過勤務手当を払う気もないくせに・・・だ。それよりなにより、あなた達は、そうやって入力して、本当に従業員の特徴を掴んできたのか・・・

挙げ句には、「あ~ワタシも入力したかった!」とか言う・・・ イジメかよ!

「来年からそうします・・・」とだけ言った。

 

しかし、問題はそんなことではなかった。

この作業を通して、恐るべきことが判明することになった

 

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2010年8月16日 (月)

第8回 ラーメンの屈辱:後編

所長は何を思ったか、『ラーメンが食いたい』と言い出した

お昼時、K市の駅前のそのラーメン店は人気のお店なのか、結構混んでいた。15分ほど並んで、まず、所長一人があい掛けの席に案内された。私はさらに10分ほど行列の先頭に立って待った挙げ句、カウンターの一番奥の席に案内された。

(もちろん自腹で)ラーメンの食券を購入し・・・ ちなみに先生は自分の分は経費で落とす・・・ 私の隣の席がちょうど空いた。店員さんは、気を利かせて、別の席に座っていた所長をこの席へと案内し直した。

そして二人で並んでラーメンを食い、店も混んでまだ立って並んでいる人もいたから、早々に店を後にした。外の道で・・・

突然、ヨーダがタメ息を吐き、激怒し始めた。

 

「なぜ、カウンターの奥の席に、お前が座ってるのか?!!!!!」と・・・

 

 

ハア?

 

 

アナキンの吹き替えの声の人ならそう言ったろう。

曰く、奥は目上の人が座る席で、手前は目下の者が座る席なのだ・・・と

私は、そう言われた瞬間、ちょっと寒気が来てしまった。パニくった。何を言ってるのだ・・・この人は・・・ 店が混んでたからそうなっただけで、店の人が気を利かせてくれたから、たまたまそうなっただけなのに、この人は、私が先に席にカウンターに座り、後から自分がカウンター席に案内されたと、完全に思いこんでしまっているのだ・・・

 

そして、「電車で一人で帰りなさい」と言われてしまった。

 

意味が分からない・・・ けど、もうそうするしかない・・・ 命令には絶対服従だ。

 

事務所に着き、一人で帰ってきた私に対して、奥さん先生が訝しがり、「何で一人で帰って来るのよ」と問いただした。ことの次第を全て話し、全く意味が分からない・・・と答えた。

「何でそんなことになったか、考えてご覧なさい・・・」と・・・

私も、かなり頭にきていたのんで、思いがけず言ってしまった。

「先生は席を立った瞬間にこれまで自分が先に案内され、先に一人で座っていたことを、完全に忘れてしまったとしか思えません・・・」

「人の主人をボケ老人みたいに言わないで頂戴!」

しまった!と思ったが、あとの祭り・・・ 今度は奥さん先生が激怒してしまった。しかし、本当にボケてしまっているのだから、言わない訳にもいかない・・・

「あの人はねえ、あなたは知らないかもしれないけど、過去には大きな会社で中心となって大リストラも断行し、労災の専門家として大きな事件も扱ってきた・・・うんたら、かんたら」

奥さん先生も涙目で激怒・・・

確かに、かつての先生は労災だけでもう、6人ばかしの人を見送ってるプロ中のプロだろう。その点に関しては尊敬もする。だけど、このラーメン屋の一件だけは、どうにもこうにも納得できない。

今現在の現実は、事務所に来るなり、朝、犬の散歩で疲れたからって、いきなり、カウチに毛布を敷いて、昼間しだして、寝屁をこいて、その間私一人にすべての業務をまかせ、昼まで寝て、昼になったら、昼で昼食を取りに自宅に帰ったっきり、3時過ぎまで事務所には戻って来ないような人なのだ。もう、歳相応の老人なのだ・・・ 自分じゃまだ若いつもりなのかもしれないが、電車で立っていれば、完全に席を譲られるような世代なのだ。

 

その後、先生が事務所へ戻ってこられ、私は心の中で泣きつつ、「申し訳ございませんでした」と頭を下げた。

 

「分かればいいんだよ」と先生はおっしゃった・・・

 

私は、この事務所で自分のおかれている立場・・・もし理不尽な問題が起こっても、どんなに私が正論であったとしても、私に協力する者は誰もいない・・・私は、孤立無援・・・であることが分かった。

こんなの、業務とは関係ないただの笑い話だが、これが夏の暑い日に起こった、ラーメン屋事件の真相である。

 


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