社会保険料のしくみ3
社会保険と算定のしくみについて、備忘記録気味に書いていく。社労士受験生の参考にもなればと思う。
今回は、保険料の計算のうち端数処理 について、考えてみる。
世の中の事業主さんの多くは、1円単位の誤差なんて気にもとめない。平気で見逃していただける。それに甘え、社労士の先生方も、あまり深く追求されてこない方も多いのではあるまいか。しかし、私は1円単位の誤差が見逃せない性格だ。『端数処理』についてつきつめて考えてみた。
保険料率は「1000分の149.96」とか、非常に細かいので、これに標準報酬月額を掛けると1円以下の数字が発生するのだ。「3ヵ月の給料の平均額」などというのも、割り切れなかったりする場合がある。そして、ほとんどの人が単純に「四捨五入」で済ませてしまっている。しかし、1円以下の単位の計算でも、1等級ずれる可能性がある。1等級ずれると、下手すると、保険料で最大で1万円近い誤差が生まれてしまう可能性がある。
まず、標準報酬月額を計算する際の、3ヶ月間の給料の平均額は、1円以下は「切り捨て」で行います。
たとえば、
4月 給料 192,530円
5月 給料 195,530円
6月 給料 197,530円
だったとしたら、合計した585,590円(192,530+195,530+197,530)が合計額で、これを3で割って、195,196.66666...となるが、小数点以下は切り捨てた195,196円が平均額。つまり報酬月額となり、これを等級表に割り当てて算出した190,000円が標準報酬月額となる。この場合の給料とは交通費などもろものの手当を含めた一切合切の給料のことだ。いわゆる手取額とは違う(この額から保険料と税金を控除したのが手取り額)。また、給料支払の基礎となった日数は17日以上なくてはならない。
そのようにして、標準報酬月額が「190,000円」とか「200,000円」とか、決定したら・・・(余談だが、標準報酬月額は「180千円」とか「200千円」とかで表現する場合が多い。結局、保険料率として「1,000分の~」を掛けることになるので、コンマ以下を省略すれば、190×82とか、190×153.5とか、計算式が簡単になるのだ)
それはともかく、標準報酬月額「190千円」の人が負担する健康保険+介護保険の保険料、詰まり被保険者負担分は、
190×46.95(82÷2+11.9÷2)=8,920.5円
となる。つまり、8,920円50銭だ。これを給料から控除しなければならない。
ここで問題となるのが、1円以下となる数字、つまり50銭は切り上げなのか、切り捨てなのか・・・ 四捨五入なのか・・・ ということ・・・
もちろん、事業主が多く払う分には多く払ってかまわないので、切り捨てにしてかまわない。極端な話、百円以下は切り捨てで、給料から8,000円だけを控除して、残りの端数は事業主負担でも全然かまわない。ただ、厳密に「半額折半」する場合は、(国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律 第2条第1項)により、「事業主が、給与から被保険者負担分を控除する場合、被保険者負担分の端数が50銭以下の場合は切り捨てし、51銭以上の場合は切り上げして1円となります」とある。
つまりは、この場合は、50銭を切り捨てて、8,920円が被保険者負担分の健保+介護の保険料額となる。四捨五入ならぬ、「50捨51入」ということだ。これをExcelの数式で表現するなら、A1セルに数値を入れたとして、
四捨五入:=ROUND(A1,0)
50捨51入:=ROUNDDOWN(A1+0.49,0)
と表現される。
一方で、事業主が負担する保険料の計算式は微妙に違う。半額折半なので、被保険者が負担する保険料と同額を単純に事業主も負担すると思われがちだが、考え方が微妙に異なっているのだ。
たとえば、その企業に8人の被保険者がいたとして、それぞれの標準報酬月額が次のようであったとする。ちなみに「被保険者」とは従業員に限らない。社長であっても役員であってもよい。○○株式会社や○○有限会社、社団法人、医療法人、学校法人などの法人企業に使われる者は、だれであっても被保険者になれるのだ。その点、労災保険や雇用保険とは異なる(ただし、75歳に達すると後期高齢者医療制度・・・いまは長寿医療制度と言うことになったのか・・・になる)。具体的に、
1、Aさん 65歳 標準報酬月額 600
2、Bさん 40歳 標準報酬月額 500
3、Cさん 40歳 標準報酬月額 500
4、Dさん 40歳 標準報酬月額 400
5、Eさん 40歳 標準報酬月額 300
6、Fさん 40歳 標準報酬月額 250
7、Gさん 40歳 標準報酬月額 200
8、Hさん 30歳 標準報酬月額 126
これらの数字ををすべて合計して(600+500+500+400+300+250+200+126)、=2876。これに保険料率を掛ける。たとえば、健康保険料率(1,000分の82)を掛けると、2876×82=235,832円が企業が実際に支払う、支払わされる健康保険料額となる。
介護保険料率の考え方も同様で、40歳以上~65歳未満の人の標準報酬月額をすべて合計して、(500+500+400+300+250+200)、=2150。これに、介護保険料率(1,000分の11.9)を掛けると、2150×11.9=25,585円が企業が実際に支払う介護保険料額となる。
同じく、厚生年金保険も同様で、去年の厚生年金保険料率(1,000分の149.96)を掛けた場合、2876×149.96=421,284.96円となる。この段階で初めて、切り捨てられて、421,284円が企業負担分の厚生年金保険料額となる(※今現在の保険料率1000分の153.5を使うと小数点未満がつかないため去年の保険料率を使った)。
で、これらを合算した、682,701円(235,832+25,585+421,284)が実際に口座から引き落とされるお金で、ここから先に預かっていた被保険者負担分をさっ引いた額が、実際の企業負担分といえる。
このようにして計算した場合、企業負担分と被保険者負担分は厳密には同額にはならず、10人程度の会社で、たいてい1~3円程度違ってしまうことになる。それくらいの誤差なら気にしませんよと言っていただける事業主さんならそれでもいいんだけれど、1円単位で拘る方なら、このように厳密に計算することが求められる。
さすがに受験レベルでここまでは求められないと思います。いずれ理解すればいいと思います。
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