社会保険料のしくみ2
社会保険と算定のしくみについて、備忘記録気味に書いていく。社労士受験生の参考にもなればと思う。
今回は、社会保険がどういうタイミングで発生し、事業主はどういうタイミングで納付の義務を負い、被保険者はどういうタイミングで給料から控除されるのかについて、考えてみる。
前回も書いたことと重複するが、基本として、健康保険は入社月から加入となり、退社月の前月まで保険料の納付義務を負うこととなる。例えば、ありえないだろうけど、月末にその会社に入社した場合、具体的に、4月30日に入社したような場合、4月はたとえ30日の1日しか働かなかったとしても、7月のひと月分の保険料が発生する。
そして何年かたって、7月20日に退社したような場合。その月は保険料が発生せず、前月の6月分までの保険料の納付義務を負う。日本は国民皆保険なので、退職したその人は、辞めた7月には国民健康保険へと移行する、あるいは、任意継続被保険者となる、はたまた、7月中に別の会社に就職して次の健康保険の被保険者となるか、とにかく辞めた月はもう別の保険の被保険者となってしまうので、そこで新たな保険料の納付義務発生することになる。
ここで注意するのが、月末に退社したような場合。
たとえば7月31日に退社した場合は、「資格喪失日」は翌日の8月1日となる。つまり、8月はたとえ1日も働かなかったとしても、その保険の被保険者となってしまい、「前月の保険料」として、7月分までの保険料の納付義務を負うということになる。健康保険は企業と従業員の半額折半が基本なので、月末に退社すればひと月分の保険料の半額が浮かせられるというテクニックが生まれる。
社会保険の「翌日喪失」という原則は、「死亡」の場合も同じである。7月31日に死亡した場合、資格喪失日は8月1日となる。ある企業の従業員の被扶養者がお亡くなりになって、「健康保険被扶養者異動届」と「家族埋葬料」の請求を同時に行ったのだが、「家族埋葬料」には死亡日を普通に書き、「健康保険・厚生年金保険被扶養者異動届」の「被扶養者でなくなった日」の欄にも死亡日をそのまま書いて提出したら、社保庁の職員に『資格喪失日は死亡日の翌日ですから・・・』と指摘され、書き直しさせられてしまったことがあった。
むろん、私が間違った訳ではなく、その従業員の方が、ご自分で書かれたのを、ちゃんとチェックせずに提出してしまったのだが・・・ 言い訳ですね・・・
同じことは、厚生年金保険にも言える。月末に退社すれば、給料の約1割が健康保険と厚生年金保険をあわせた社会保険料なので、その半額が浮くことになる。あなたの月収が約30万円なら、1万5,000円だ。もっとも、退職して即、妻や夫の被扶養者、第3号被になれるような人は、かえって損をしてしまうかもしれないが・・・
次に、被保険者は、入社して健康保険および厚生年金保険に加入すると、まず、その企業の給与体系や同様の社員の初任給などを参考にして、「標準報酬月額」を決定する。いわゆる資格取得時決定というやつだ。私の事務所で扱っているような普通の会社なら、たいてい「180」か「200」だ。つまり初任給が18万円か20万円かということ・・・
その「180」に保険料率を掛けることで、企業が負担すべき保険料が算定される。その人が入社して、最初から残業をいっぱいして20万稼ごうが、25万稼ごうが、企業が負担すべき保険料は変わらないのだ。入社した時点で決めた標準報酬月額が計算のもととなる(※あまりに金額に差がありすぎると修正させられることもある)。たとえ入社時に標準報酬月額を安く見積もったとしても、4月、5月、6月の給料の平均額を元に定時算定が行われ、新しい標準報酬月額がその年の9月から適用となる。
具体的にば、4月1日に入社して、その人の標準報酬月額が「180」で、その年の8月20日に辞めたとしたら、
4月 180×保険料率=4月分の保険料
5月 180×保険料率=5月分の保険料
6月 180×保険料率=6月分の保険料
7月 180×保険料率=7月分の保険料
8月 8月20日退職
と、4ヵ月分の保険料が発生することになる。そして、4月の保険料は、基本的に翌月、つまり5月31日が納期限あるいは、口座振替日となる。
・・・以上が、企業が負担すべき保険料の原則の全てであり、これを企業は納付する義務を負う。これと被保険者が負担すべき保険料・・・つまりは、その半額分とは別けて考えた方がよい。頭がゴチャゴチャになる。企業が負担すべき保険料は、給料が当月払いだとか、翌月払いだとかは基本的に関係がないのだ。
一方、被保険者である従業員は、どういうタイミングでこの保険料が給料から控除されることになるのか? 健保法167条で「通貨をもって報酬を支払う場合は、前月の保険料を報酬から控除することができる」ということになっている。
たとえば、その会社が「20日締めの25日払い」の場合
4月 4月25日の給与(4月1日~4月20日分)からは控除できない
5月 5月25日の給与(4月21日~5月20日分)から4月分の保険料を控除
6月 6月25日の給与(5月21日~6月20日分)から5月分の保険料を控除
7月 7月25日の給与(6月21日~7月20日分)から6月分の保険料を控除
8月 8月25日の給与(7月21日~8月20日分)から7月分の保険料を控除
となる。
なぜ翌月控除が原則となっているのかというと、たとえば、上のケースで4月20日に入社したような場合、4月の給料は20日の1日しか働いておらず、18万円×1/30で25日に支払われる給料は、約6,000円くらいにもかかわらず、180×41+180×76.75=21,195円を控除されなければならないことになってしまう。これでは、給料がマイナスになってしまいかねない。
ただ、現実の実務ではこの原則を事業主が知らないことも多いので、
4月 4月25日の給与(4月1日~4月20日分)から4月分の保険料を控除
5月 5月25日の給与(4月21日~5月20日分)から5月分の保険料を控除
6月 6月25日の給与(5月21日~6月20日分)から6月分の保険料を控除
7月 7月25日の給与(6月21日~7月20日分)から7月分の保険料を控除
8月 8月25日の給与(7月21日~8月20日分)からは控除しない
ということになっている場合も大変多い。起業する前から社労士に相談している訳でもないのだ。この場合は、厳密には被保険者から同意を得ないと、賃金の全額払いの原則に反してしまう。
また、たとえば「月末締めで月末払い」のような場合で、8月31日に辞めたような場合は、
4月 4月30日の給与(4月1日~4月30日分)からは控除できない
5月 5月31日の給与(4月21日~5月20日分)から4月分の保険料を控除
6月 6月30日の給与(5月21日~6月20日分)から5月分の保険料を控除
7月 7月31日の給与(6月21日~7月20日分)から6月分の保険料を控除
8月 8月31日の給与(7月21日~8月20日分)から7月分および8月分の保険料を控除
となることもできる。退職月に限って前月及びその月の保険料の控除が認められている。ただ、「月末締めで月末払い」というようなケースはあまりないし、こうなってしまうケースは稀だろうと思う。ところが、月末退社の場合で2月分の保険料が控除されてしまうというケースはよく耳にする話なので、その場合、多く保険料を引かれてやしないか、注意する必要がある。保険料のことは社労士さんにお任せしているから・・・ 税理士さんにお任せしているから・・・ コンピューターで処理しているから・・・ とかいいながら、間違ってしまっているケースは実に多い。ホント、洒落になりません。
これらと比較して、雇用保険料を給与から控除する場合は、単純で、たとえば、その会社が「20日締めの25日払い」の場合
4月 4月25日の給与(4月1日~4月20日分)から控除
5月 5月25日の給与(4月21日~5月20日分)から控除
6月 6月25日の給与(5月21日~6月20日分)から控除
7月 7月25日の給与(6月21日~7月20日分)から控除
8月 8月25日の給与(7月21日~8月20日分)から控除
というように、支払う給料ごとに雇用保険料率(H21.7現在は1000分の4)を掛けてさっ引けばよい。雇用保険はだいたい1,000円くらいなので、引きやすいのだ。
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