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2008年2月27日 (水)

ガンダム00が面白い

今のガンダムは当然、ファースト、Zの生みの親である、原作兼監督、富野由悠季氏はそうたいそう、関わっていないのだろうけど、平成の世ににガンダムの制作を任されることになった監督は大変だ。

 

ショパンの事情もあってか、今のガンダムに求められるのは、まず、第一に「総方向にウケるガンダム」であろう。そのターゲットは、利益率の高いオモチャ、ゲームの購入層の中核を為すお子様層、キャラクター事業を効果的にバックアップする婦女子層、そして、結局見捨てることができないのが、メディア、プラモ、雑誌等を薄く補佐し、あらゆるガンダムに対する批評の核となるわれわれ『大人男子世代』に対して、受けいられる作品作りが求められている。

実は、われわれ『大人男子世代』は、ZZ以降から、Seed、Seed Destinyに至るまででの長い過程の中で、ほぼ見捨てられてしまった感が強い。われわれ大人男子世代は、以前、単純にファーストが好きというままで完結してしまっている。これは比較的自由になる金を持った層を取り込めないのは、非常にもったいない話である一方で、エヴァンゲリオン、デス・ノートを例に出すまでもなく、社会現象を巻き起こすほどのブームになった作品は、われわれ大人男子世代に対しても、作品にぐいぐい引き込む力を持っている。

本作品(ガンダム00)は、そんな『大人男子世代』に対して、再びガンダムに回帰させる意図をもった作品でないかと思う。

しかし、「総方向にウケるガンダム」とは、ちょっと考えてみても、かなりの難題である。
なぜなら、各層が求める方向性がてんでバラバラ。みんな違っているからだ。そこでまず、我々、『大人男子世代が熱狂したファーストガンダム、Zとは、何であったか』についてちょっと考えてみよう。

 

ファースト、Zのテーマは共通している。それは、『少年は成長する。大人は成長しない』ということである。当時の80年代の少年達は、同世代の少年が成長する物語に、自分を重ね合わせ熱狂したのだ。それは少年ジャンプやドラゴンクエスト等のRPGブームとも共通するテイストである。

アムロは最初メカオタクのおやじにもぶたれたことのない甘ったれた“坊や”であったが、戦争を通じて出会いと別れを経験し、戦士として覚醒し、恋人(ララア)を自らの手で殺してしまうという悲劇に直面し、最終的には自分のおさななじみを自分より身体、能力に劣る同僚に寝取られてもそれをやさしく見守ってあげられるようなシニカルな青年に成長してしまった。

赤いきつねのシャアは、最初から最後まで純粋なであり続けた。悪であっても嫌な奴でないから、上司には見込まれ、部下には慕われ、敵からは恐れられる八方美人でありながら、最初から最後まで復讐者というキャラクターに拘泥し続けた。最初から大人であるゆえ、最後までなにも変わらかった。

カミーユは、両親を殺され、恋人を殺され、登場人物中、いち早く戦争が悲劇しか生まないものであるということに目覚めつつも、自身が登場人物中、最も効率的、効果的な殺人マシーンであるという矛盾に耐えきれなくなって、最後には精神を崩壊させてしまった。

 

そもそも、全てのガンダム作品に共通するテーマは『戦争』ということである。物語の作り手が、まともな倫理観の持ち主であった場合、『戦争』、『人を殺す』という課程を通しては、ねじ曲がった成長しか遂げられないという結論にどうしても達してしまう。三流のアメリカのアニメや映画のように、戦争に勝ちました。ハッピーハッピーは、この日本では許されない。あり得ない話なのだ。それは、古今東西、一流の漫画、アニメ、全てに共通するテーマでもある。戦争を肯定するような話で大成した作品はただの1本もない。少年は成長するが結局ハッピーエンドもない。

だったら、なぜ『戦争』をテーマにするのか?

視聴者が熱狂するからだ!

 

ファースト、Zという作品は、『少年は戦士として成長する』というテーマに熱狂させ、しかし、『戦争を通しては人はまともに成長しないんだよ』と諭した作品であるといえる。

戦争、人殺しは、人を熱狂させる。しかし、日本人としてはそれを否定しなければならない。だからこそ、登場人物は『少年』なのである。現在の日本の刑法では、未成年はいくら残酷、残虐な犯罪を犯そうと、死刑にされることはない。それは、人を殺すまでにいたる課程を導いてしまったのは、至らせたのは、大人、社会が追うべき責任の一端がそこにはあるという通念、思想がそこに横たわっているからに他ならない。少年のうちなら、まだ矯正可能であるという希望がそこにある。なぜなら、少年は成長するからだ。戦争だからではなく、少年だから、人殺しを許されるのだ。だから、戦争、人殺しというテーマで作品を書く場合、主人公は少年でないと、あとあと、矛盾が起こり、物語が破綻してしまう。

そして、『デス・ノート』を評した時にも書いたが、正しい倫理観を伝えなければならないというのは、一流の物語の書き手として当然求められることであり一流である証でもある。夜神ライトは最初から『悪』であった以上、惨めな敗北、哀れな最期を遂げてしまうの結末は、当然作者の頭に最初からあった「絵」なのだ。読み手の子供達を倫理的に間違った方向へ導いてはならないのは絶対条件である。

ゆえに、成長する少年が戦争に巻き込まれるというパターンでなければ、ガンダムは成立しない

 

 

しかし、このテーマは、すこぶる婦女子達には評判が悪かった。未成熟な女にとって、男とは『成長する』というものでは何も“感じ”ないのだ。男は最初から完璧でなくてはならない。総方向にウケるガンダム作りにあって、これは婦女子層を取り込むために絶対譲れない条件である。

よって、『ガンダム00』の登場人物、ガンダムマイスターと呼ばれるガンダムのパイロット達は、最初から完璧な戦士として登場せざるを得なかった。成長しない。それでは大人男子世代を取り込めない。から、われわれ大人男子の多くは、最初から毛嫌いしてしまった人も多いことと思う。しかし大人男子世代は婦女子層よりも許容範囲は広い。成長譚でなくとも、取り込める余地は十分ある。

そこで、あらたに、大人男子世代を取り込むためのキーワードとして『リアル』が与えられることとなった。メカニックや絵的なリアルでない。もろ、アメリカ、EU、中国の3強を想像できる関係を物語に取り入れてしまった。それが生み出したものはズバリ『殺伐』だ。あり得る設定の、あり得ないす荒みきった設定、これまでのアニメとは何かが違うぞ・・・という感覚、期待は、実は最初からあった。

最初から戦士として登場した主人公たちは当然成長しない。成長しない以上、それは『大人』であり、シャアと同じで絶対だ。いかなる場合も、人殺し、殺戮者は肯定されえない。もし作者が一流であれば、その結末は、夜神ライトと同じく、惨めで、哀れな最期でしかありえない。それが分かっていながら、その結末は当然だと思いながら、主人公サイド、敵、すべてが、高河ゆんの味付けの萌え顔キャラクター達に自信が持てないでいた・・・

 

違った!

実は、それすら、『しかけ』の一部であったのかもしれないと思わせるような方向に物語が展開しはじめた。

 

物語の序盤から、微妙に綻びはじめる主人公サイド。倫理観、微妙に剥き出される主人公サイドのダークサイドは気になっていたが、それは過去のガンダム作品、ガンダム以外の作品にも見られないことではなかった。可愛い顔をしたキャラクター達が残酷であればあるほど、残虐であればあるほど、そのショックははかりしれない。しかし、これは『ひぐらしのなく頃に』でも表現されてきたことだ。しかし、あれははっきりと、“あり得ない”残酷さでもあったが、それでは、何も目新しくはない・・・

しかし、それは私の思い過ごしに過ぎなかった。
ガンダム00が過去のアニメ作品と比べて、凄いのは、アメリカ、EU、中国をそのまま物語に取り入れたこれまでのアニメとしてあり得ないリアルさをベースに、悪いことはしないであろう可愛い顔のキャラクター達が、微妙に、本当に微妙に、現実に起こりうるレベルの残酷さ、残虐さを繰り出して、そこから至る結末も、本当に微妙に、現実に起こりえるレベルの残酷さ、残虐さであることを表現している点だ。過去のどのアニメと比べても、このさじ加減が、ギャップが、メチャクチャリアルで見事としか言いようがない。

ある意味、戦争というものが、いかに残酷で無惨ななものであることを表現したアニメは、過去『はだしのゲン』以外にあったであろうか・・・? 『はだしのゲン』は最初から重い物語であることを分かっているが、ガンダムはこう展開するとは思いもよらなかった。この盲点が、一言、“素晴らしい”の一言、である。

 

まだ視聴されてない方のために具体的な内容はぼかさるをえないので、詳しく書けないのが歯がゆいが、『ガンダム00』は大人男子の視聴にも耐えうる一流の作品だということは断言できる。“00”とは『2000年以降の100年間の近未来』を表しているのだろうが、一方で、『殺人許可(=戦争)』ということも表しているのだろう。

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受信: 2008年2月27日 (水) 12時33分

コメント

感動しました。

投稿 通りすがり | 2008年3月10日 (月) 15時38分

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